le monde lunatique

白銀色の月光を浴びて、狂ってしまったのは世界?それとも私?

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大峯顯氏の『親鸞のコスモロジー』を読むーーその11

さて、本書もようやくグランド・フィナーレ、大峯氏はハイデガーに視線を転じ、「言葉が語る」というハイデガーの思想が、名号にも芭蕉の句にも通ずると指摘します。

「仏さまの言葉というと、仏さまがいて、それが語るというように考えがちですが、ハイデッガーは「言葉が語る」ということを言っています。言葉が語る。もちろん人間が語るのですが、その人間が語れるのは、まず言葉が語るからだ。言葉が語るといっても、言葉には言語能力も音の分節器官も備わっていないのだから言葉は語れないだろう。人間以外に言葉を語るものはいないではないかとわれわれは普通考えます。しかし、われわれが語るということの一番根底にあるのは、言葉が語るということです。言葉が語らなかったら人間が語ろうと思ったって語れないということをハイデッガーは言ったのです。その言葉が語るという世界が名号という世界だと理解することができるように私は思います。言葉が語るということを仏が語るという具合に表現してもよいと思います。」(本書218頁)

「先ほどの芭蕉の句でも、たとえだと思ったらいけないのです。菊の言葉を聞くとかいうと、たいてい比喩のように考えがちなのですね。菊というのは秋に咲く植物であって植物が言葉を語るわけがない、言葉を語るのは人間だけだと私たちはかたくなに思い込んでいますから、菊がものを言うなんて夢物語か子供だましみたいなものだと思っている。しかしそれなら、仏さまが語ると言ったってやはり夢物語のようになるのではないだろうか。仏さまが私を呼んでいるといったって、それはたとえではないのか。しかし仏さまが呼んでいるようにも思えるというのでは助からないのです。仏さまの声が本当に聞こえなければならない。仏を信じるということは、「おまえを必ず救う」と言っている仏の声が聞こえたということです。これはけっして比喩ではありません。仏さまがわれわれを呼んでいるということはけっして比喩ではない。親鸞聖人が、帰命とは「本願招喚の勅命」だと言ったのは、仏さまが私を呼んでいるように思うということではないのです。文字どおり実際に呼んでいるという厳然たる事実を言っているのです。」(本書219-20頁)

南無阿弥陀仏という名号や芭蕉の句は「言葉」以外の何ものでもありません。しかしそれは、話し手の意思・意図やものごとの意味を伝える言葉ではないと大峯氏は指摘します。言葉そのものが語り、その語りのなかでみずからを明らかにしていく、そうしたいわば自己完結的な言葉です。その自己完結的な絶対語がわれわれに呼びかけてくるのです。もしかするとこれは、ある呼びかけが先にあって、気が付いてみるとそれは言葉(言語表現)だったということなのかもしれません。
かくて、『親鸞のコスモロジー』は次のように結ばれます。
「芭蕉の開いた詩というものは、言語宇宙の底知れない深さに私たちを覚醒させるはたらきをしているように思われます。常識を超えた言語の世界の不思議です。そして芭蕉の俳句が開いたような世界をもっとどんどん深めていって、それを超えたもうひとつの深みに、南無阿弥陀仏の名号の世界があるのではないかと私は思います。」(本書220-1頁)

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テーマ:哲学/倫理学 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2006/08/21(月) 08:48:47|
  2. 仏教史&仏教思想
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