le monde lunatique

白銀色の月光を浴びて、狂ってしまったのは世界?それとも私?

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不可能な恋の顛末記ーー『ジョゼと虎と魚たち』

ホップ、ステップ、ジャンプ。
犬童一心の映画『ジョゼと虎と魚たち』(2003年)を『金髪の草原』(2000年)と『メゾン・ド・ヒミコ』(2005年)のあいだにおいたとき、そんな「ステップの映画」といえるだろうか。
『ジョゼと虎と魚たち』には、『金髪の草原』にみられたような、直接のファンタジーはない。大阪の下町を舞台に、若者の生態が静かに描かれる。
青春映画?恋愛映画?
この映画に燃えるような恋はなく、燃えない恋が燃えないまま描かれ、燃えないまま終わる。燃えあがるばかりが恋ではないということが共感をよび、大勢の人に支持されたのだろう。

麻雀屋でアルバイトをする大学生・恒夫(妻夫木聡)は、ある朝、麻痺で乳母車に乗ってしか動けない少女ジョゼ(池脇千鶴)と出会い、ジョゼの家に入り浸るようになる。
例によって動機のはっきりしないあいまいな人間関係。
映画の前半は、押入のなかに祖母が近所から拾ってきた本を積み重ね、それを読むことと乳母車に乗せられての散歩だけが外界との唯一の接点だったジョゼの生活の描写。
祖母の死を機にジョゼがひとりぼっちになったことを偶然知った恒夫は、ジョゼの家を訪ね、誘われるままにジョゼと肉体関係を結ぶ。
果たしてこれは恋?
ジョゼを車に乗せての九州への初ドライブ。二人の気持ちを結び付けるはずだったドライブが、二人の気持ちに違和感をうんでいく。
それからしばらくして、介護に疲れた恒夫はジョゼを捨てる。
後には成熟した女になったジョゼが残される…。

前作『金髪の草原』では、日暮里邸とヘルパー・なりす(池脇千鶴)の日常が交互に描かれ、そのなりすの日常は、ドキュメンタリー風なタッチで際立っていたが、『ジョゼと虎と魚たち』は、いってみればそのなりすの日常をそれだけ取りだして拡大したような映画だ。犬童一心をファンタジーの作家とみるならば、そのファンタジーがある特定の空間にだけ広がっているのではなく、むしろあたりまえの空間のなかにもファンタジーがあるということを主張しようとしたということになるだろう。あるいは、安易なファンタジー表現を嫌って、日常にどこまで接近できるか、自分にかせをはめてみた映画といえるだろうか。
『金髪の草原』で、老人とヘルパーの不可能な恋を追った犬童が、ここでは身体障害の少女と健康な若者のあいだの不可能な恋とその結末を追ったとみることも可能だろう。

ただ、実際にできあがった『ジョゼと虎と魚たち』の完成度には、私はやや疑問をもつ。日常の描写のなかにファンタジスト犬童がはいりこんで、描写を甘くしてしまっている。この映画、もっと突き放して、リアリズムに徹して撮るべきではなかったか。
主人公・恒夫を演じる妻夫木聡もミス・キャストだと思う。演技がどうこうというのではなく、どこかツルンとした印象を与える妻夫木のハンサム・フェイスが、作品全体の方向性とマッチしていない。

とはいえ、『ジョゼと虎と魚たち』のこうしたリアリズム探究があるからこそ、『メゾン・ド・ヒミコ』の惜しげもないファンタジーの爆発があるのだと思う。
『金髪の草原』から直接『メゾン・ド・ヒミコ』に到達するのではなく、あいだに『ジョゼと虎と魚たち』を制作するということに、作家・犬童一心の「真実」をみる。
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  1. 2005/09/07(水) 11:35:05|
  2. 映画
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:11
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コメント

お久しぶりです

私のblogにおこし頂いて有難う御座います
また コチラの方にも おじゃまします

写真 とってもチャーミングですね
  1. 2005/09/10(土) 23:53:00 |
  2. URL |
  3. iwasabi #-
  4. [ 編集]

lunatiqueさん、こんばんは。
「金髪の草原」のレビューがとってもいいなぁ。
と思って先日TBさせていただいたミミです。
「ジョゼ虎」も犬童監督の作品なんですねー。観なくちゃ!
一瞬うまくいきそうに錯覚しちゃうけれど、やっぱり無理。
そんな恋の話なのでしょか。また、なにげないシーンで泣いてしまそう。
  1. 2005/09/11(日) 00:08:19 |
  2. URL |
  3. ミミ #JalddpaA
  4. [ 編集]

コメントありがとうございます。

iwasabiさん、ミミさん、コメントありがとうございます。

iwasabiさん、昨日、某飲み屋で黒田アーサーに似てるとかいわれたんですけど、どんな人か知らなかったのでRESがつけられなかったです。
ミミさん、『ジョゼと虎と魚たち』は、私の視覚からすると今一なんです。
やっぱり『メゾン・ド・ヒミコ』かなあ…。
昨日みた『タッチ』は、けしてできがいい映画と思いませんが、それでも感動してしまいました。
あとで感想アップしますね。
  1. 2005/09/11(日) 09:22:26 |
  2. URL |
  3. lunatique #-
  4. [ 編集]

黒田アーサーは

すこし濃い目の男前の人ですよ。ハーフだったかな?
安達由実っていうかなり年下の女の子と付き合っていましたが最近ふられたようです(笑)
  1. 2005/09/11(日) 21:46:06 |
  2. URL |
  3. iwasabi #qbIq4rIg
  4. [ 編集]

ミミさんのところに、わたしのコメントにコメントしてくださり、ありがとうございます。
つたない内容ですが、ジョゼに関して考えをまとめてみました。
TBつけさせていただきました。お暇な折にお越しください。
  1. 2005/09/19(月) 23:45:05 |
  2. URL |
  3. dora-june #-
  4. [ 編集]

dora-juneさん、ようこそ♪
『ジョゼと虎と魚たち』につき、コメント&トラックバック、どうもありがとうございます。
dora-juneさんのブログにも書き込ませていただきましたが、『ジョゼと虎と魚たち』のなかで、理解しにくかったジョゼの内面、dora-juneさんの言葉でようやく少しみえてきました。
犬童監督の作品では、スクリーンを通してはほんのわずかしか語られないことが、ほんとうに大きな意味をもってくるのですね。
  1. 2005/09/20(火) 00:48:31 |
  2. URL |
  3. lunatique #tmBa20pk
  4. [ 編集]

お久しぶりです。ジョゼの映画評で<a href="http://www.ne.jp/asahi/hp/mastervision/index.html">m@stervision</a>の考え方が少し面白い見方だなと思いました(「いもじな日々」で紹介されてました。title indexからサ行でジョゼ探せます)。ジョゼを人魚と見立てるというのは、「足の不自由さ」「海に憧れる」「虎を見たい(人魚の陸上生物への憧れ?)」などの特徴から妥当な意見だな、と。そう考えると、彼女の存在そのものがファンタスティックなものであるが、あえて彼女の存在がどんなものであるか極力描かないために、あの映画は非常にリアルに受け止められる。彼女を障害を持った少女とだけ見てしまうと、彼女の想像を絶するような孤独さが完全には伝わらないような気がします。障害を持つ人々は他にもいるにも関わらず、あの映画を見た人は皆おそらくジョゼはこれから先ずっと一人なんだろうなと漠然と思ったのではないでしょうか(障害を持つ他の人々の世界に行くと通常は思うのではないでしょうか)。ジョゼの世界は恒夫のいる世界にも障害を持つ人々の世界にもどちらにもなくて、陸に上がった人魚という彼女ただ一人しか存在しない世界。泡になって消えることもできず(人魚姫は泡になって消えたことで、もしかしたら生き地獄を味わわずに済んだとも言えるかもしれません)、孤独の中で生き続けなくてはなりません。
池脇千鶴三部作(大阪物語、金髪の草原、ジョゼと虎と魚たち)の残りを借りてみよっと。
  1. 2005/09/20(火) 10:56:31 |
  2. URL |
  3. BunMay #H.4ahg6Q
  4. [ 編集]

生き人形の世界

Bun Mayさん、こんにちは。おもしろそうな『ジョゼ…』評のご紹介、ありがとうございます。まずはm@stervionサイトの『金髪の草原』評および『ジョゼ…』評のページ、再度打ち込んでおきますね。

http://www.ne.jp/asahi/hp/mastervision/archive2000d.html#KINPATSUNOSOGEN
http://www.ne.jp/asahi/hp/mastervision/archive2003c.html#jose

(このサイトでは『メゾン・ド・ヒミコ』の評価は『金髪の草原』および『ジョゼ…』よりも低いようです。コメントがまだアップされていないのが残念ですけど。)

ただ、パッと読んだ感じでは、ちょっと腑に落ちない点もありますから、もう一度、二つの評を読んでみます。
ところで、ジョゼの心理を離れて、『ジョゼ…』という映画全体に関していうと、わたしはこれは、『金髪の草原』がいわゆる「人形」の世界の感覚にとても近いから(=リアルと非リアルのはざまの探究)、犬童監督が「生き人形」的関心からつくったのではないかと思うんですね。
そこまではなんとなくわかるんだけど、実はその先がよくわからない…。
  1. 2005/09/20(火) 12:06:09 |
  2. URL |
  3. lunatique #tmBa20pk
  4. [ 編集]

『カスパー・ハウザーの謎』の謎のことなぞ

ところで、m@stervisionサイトの『ジョゼ…』評にでてくる『カスパー・ハウザーの謎』(ヘルツォーク)は、私がとても好きな作品なんですが、なんで『ジョゼ…』と『カスパー・ハウザーの謎』の謎が結びつくのか、その辺がよくわからない。
  1. 2005/09/20(火) 12:12:50 |
  2. URL |
  3. lunatique #KAqg7Yzw
  4. [ 編集]

妻夫木君は、好きなんだけれど、この役にはちょっと・・・と思いました。犬堂さんの「いぬのえいが」を最近DVDで見て、面白いと思いました。
記事に書きましたが・・・・
タッチは女子高校生に囲まれて見ました。
洋画でも邦画でもなんでもござれ!!

「春の雪」予告で見て、akaboshi さんにコメントしたら、映画と本とは表現方法が違うのだから、
どちらも大切!と言われ、読んでみました。
妻夫木君の演技力が何処まで、生かされてるのか
とても不安で、気になっています。
美輪さんの若い時の様なお顔が、この映画には合うと思っていますし・・・・・・不安、ふあん、フアン
ファン、やっぱり、美輪さんがいい・・・・
  1. 2005/10/02(日) 09:04:41 |
  2. URL |
  3. sea1900 #-
  4. [ 編集]

妻夫木君を客観的にみれるところいいですね。

『ジョゼと虎と魚たち』は、私にとってはとても難しい映画です。一つには、恒夫の視線とジョゼの視線の両方が入っているところが、この映画をわかりにくくしてるんじゃないかと、今では思っています。いずれにしても、sea1900さんの妻夫木君を客観的にみれるところ、いいですねえ。sea1900さんのブログ記事を読んで、『犬の映画』もみたくなってしまいました♪
で、『タッチ』は、自分でもなぜあの映画にあんなに感動したのかよくわからないのです。それを確かめるためにも、この映画、もう一度みてみたいと思っています。
   *   *   *
え~それと、実は私は三島が苦手なんです。でも、akaboshi07さんのコメントとおそらく違う意味で、映画と文学作品は違うわけですから、公開されたらぜひみてみたいと思っています。
  1. 2005/10/03(月) 01:10:55 |
  2. URL |
  3. lunatique #tmBa20pk
  4. [ 編集]

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