le monde lunatique

白銀色の月光を浴びて、狂ってしまったのは世界?それとも私?

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小説『春の雪』ーー意識の単純化に違和感

映画『春の雪』公開にあわせて、その原作である三島由紀夫の小説『春の雪』を読んだ。はじめに書いておくと、私は三島の小説が好きではない。今まで、何冊か読んではいるが、好き・嫌いでいえば、むしろ嫌いな作品が多い。たとえば『仮面の告白』は、そうした嫌いな小説の代表のようなものだ。人間図式が、「わかる・わからない」ということであまりにも単純化されすぎているような気がするのだ。『春の雪』がその第一部をなす『豊穣の海』も、数年前に一度全体をとおして読んでいるのだが、けして好きにはなれなかった。

さて『春の雪』。三島は主人公・松枝清顕の行動を描写するときに、その行動の背景にある心理を事細かに書き込んでいるのだが、今回この作品を読んで、何よりもまずその三島的な心理描写に、私は強い抵抗を感じた。つまり、三島のように登場人物の心理を細かく規定してしまうと、ほんらい潜在的であるはずの意識が、清顕自身に、あるいは友人の本多や聡子、蓼科に自明の意識であるように映じているのではないかと思えてくるのだ。
おそらく、『春の雪』を書いていた三島にとっては、意識・無意識とは、単に気づく・気づかないという相違でしかなかったのではないか。それと気づいてしまえば、無意識は顕在的な意識となる。そうした明確な「意識」が、登場人物の行動を決定していく。たとえば映画『メゾン・ド・ヒミコ』の分析で指摘したような意識の多面性への配慮、一つの行動の背景に無限の意識が同時に反映されているというような捉え方、三島からは感じられない。

作品の途中まで清顕と聡子の「意識」の産物であるかのように語られていた恋物語が、実はすべて蓼科の思惑通りに進んでいたのであり、清顕の「意識」も、聡子の「意識」も、蓼科に操られていたとするようなストーリー展開も、謎解きとしてはおもしろいのだが、これまた、人間の意識や行動を、あまりにも単純化しているような印象を受ける。
作品全体の構造を私のように理解すると、この作品のなかで、清顕と聡子の「意識」が周囲から解放された独自のものとして展開するのは、読者に蓼科の思惑が明らかにされた以降ということになるが、それにしては前段の疑似恋物語が長すぎる(蓼科の思惑がなければ、『春の雪』の前半部は「不可能な恋」への賭けの物語として読むことができる)。

原作が好きではないので、実際のところ、私は行定勲の映画『春の雪』にほとんど何も期待していない。ただ、何も期待していないので、その分、映画としてはおもしろくみれるのではないかという変な期待はある。三島が描写している登場人物の心理をすべて説明するとなると、この映画はナレーションだらけになってしまうと思うが、そういうわけにもいきますまい。
さていかなることにあいなりますやら…。
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テーマ:本の紹介 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2005/10/29(土) 11:27:13|
  2. 文学(人と作品)
  3. | トラックバック:2
  4. | コメント:2
<<マーラー第5交響曲演奏史ーー映画『春の雪』に触発されながら | ホーム | 『メゾン・ド・ヒミコ』ーー深層意識のラブストーリー>>

コメント

観たら、すぐに書きたいseaです。
TBさせて頂きました。
  1. 2005/10/30(日) 03:05:03 |
  2. URL |
  3. sea1900 #-
  4. [ 編集]

六本木、今昔

佐藤秀さん、seaさん、TBありがとうございます。
映画『春の雪』、昨日六本木ヒルズ内の映画館で観てきました。この劇場、私の居所からは近いけど行くのははじめてで、昨日も、時間がなくてたまたまこの映画館にしただけだったのですが、小説『春の雪』は、六本木付近(鳥居坂、霞町)が大きな舞台になっていますから、選択は偶然でも、六本木ヒルズでこの映画を観るのはそれなりに意味があったかと思っております。
映画の感想は別に書きたいと思いますが、私は映画『春の雪』の自由な脚本に基本的には賛成です。
ただし、その自由な脚本、前半成功、後半失敗ではなかったかと思っています。
  1. 2005/10/30(日) 08:46:20 |
  2. URL |
  3. lunatique #tmBa20pk
  4. [ 編集]

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春の雪に紅葉(´△`)ハア

今日からロードショー公開された映画「春の雪」を早速観る。原作の三島由紀夫「豊饒の海・第一巻春の雪」を読んでいる身としては少々というかかなりの戸惑いを隠せない。なんで、春の雪に紅葉なんだよ?
  1. 2005/10/29(土) 22:25:15 |
  2. 佐藤秀の徒然\{?。?}/ワカリマシェン

「 春の雪 」

原作はすでに読んでいたので、雪をどういう風に降らすのかとかマーラーの第5番が何処に組まれているのかを知りたかった。また、大正時代の和服姿を見たかった。内容は、妻夫木君と竹内結子との「春の雪」であって、私は、三島由紀夫の「春の雪」を期待していた訳ではない。
  1. 2005/10/30(日) 03:03:00 |
  2. 海の上のピアニスト

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