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白銀色の月光を浴びて、狂ってしまったのは世界?それとも私?

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『パープル・バタフライ』ーーおさえた大人の歴史ドラマ

このところ立て続けに自閉的な映画ばかり観たので、ロウ・イエ監督の中仏合作映画『パープル・バタフライ』は、外に向かってなにかを伝えようという明確な意志をもった作品であるということ、そしてそれがおさえた描写で静かに表現されているということが心地よかった。
(新宿武蔵野館で鑑賞。初日なので、上映前に仲村トオルのトークショーを聴くことができた。)

舞台は1920年代から30年代にかけての中国(満州、上海)。時代に引き裂かれる日本人・伊丹(仲村トオル)と中国人女性・ディン・ホエ(チャン・ツィイー)の使命観と愛の交錯がテーマのスケール大きな作品。
映画の表面上のメイン・ストーリーは日中の諜報合戦・暗殺合戦なのだが、人物関係が複雑であるにもかかわらず、この映画、セリフが極めて少ない。自身で監督と脚本家を兼ねているロウ・イエの意図は、複雑な人間関係を細かく説明することではなくて、とある状況のなかに投げ込まれた男と女の行動を静かに描いていくところにある。この作品では、男と女の愛も憎しみも、そうした状況のなかから自然に立ち上がってくる。
この脚本の方針と関連して特筆すべきなのが、この映画の撮影だ。私がそれを強く意識させられたのは上海駅頭での銃撃シーンだが、カメラ(おそらくはハンド・カメラ)は、一つのホームから向かい側のホームに降り立った人間を延々と移し続け、その画面の揺れとカメラの焦点がなかなかさだまらないこと、そしてショットそのものの長さが、観る側の不安感と緊張感を高める(プログラムの解説によれば、この映画のなかで、撮影監督のワン・ユーは深度の浅いレンズを多用しているという)。
またカメラ・ワークとならんですばらしいのは、この映画の大半が雨のシーンであるということで、その濡れた感じが、この映画に、輪郭の曖昧な独特の雰囲気をプラスする。
戦争(抵抗運動)を描くという点からいっても、恋愛を描くという点からいっても、この映画、人間関係や心理を説明しだせばいくらでもそうした描写をつけ加えることができたと思うが、あえてそれを排したがゆえに、ストーリー上の細かな破綻を避けることができたと同時に、作品全体に普遍性が出た。
人間描写という点では、日本人諜報員・伊丹の心理や行動に「悪い日本人」のステレオタイプなイメージを押しつけず、冷静に描ききった点も評価できる。最期の瞬間に静かにタバコに火をつけようとする伊丹のダンディズムは、日本人以外がみても納得できる男の理想像ではないかと思う(作品全体をとおして、伊丹役の仲村トオルはおさえた演技がひかる)。
それでも、この作品の難点をあえて一つあげるとすると、主要登場人物がすべて死んだあとに回想として挿入されるディン・ホエと抵抗運動のリーダー・シエ・ミン(フェン・ヤンチェン)のラブ・シーンではないか。この映画のすべての人物関係は、ここにいたるまでに充分描き尽くされており、このシーンは明らかに余計だ。

ところで、日中の1920年代から30年代を描いた映画としては意外なことに、この映画は時代背景の説明にもあまり踏み込まない。もちろん、日本による中国侵略と中国側の抵抗運動は、それがこの映画の人間関係と直接からむだけに、最初から最後まで執拗に描かれるが、それを特定の歴史的事件と結び付けることを、この映画はしない。
それだけに、物語が終わり、伊丹とディン・ホエがともに死んだ後に、日本軍の南京侵略のドキュメント・フィルムが流される意味は大きい。われわれは、それを真摯に受けとめるべきであろう。

(ちなみに、この映画のタイトル「パープル・バタフライ」とは、中国側の秘密抵抗組織のコード名)

参照『パープル・バタフライ』公式サイト
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テーマ:映画 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2005/11/13(日) 00:20:35|
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