le monde lunatique

白銀色の月光を浴びて、狂ってしまったのは世界?それとも私?

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ブルーノ・ワルター、NYフィルのブラームス

昨日は渋谷の音楽ショップ、HMVのバーゲンで、ブルーノ・ワルター(1876年-1962年)が1950年代にニューヨーク・フィルを指揮したブラームスの交響曲全集を見つけ、購入した。モノラル録音ながら、これが、CD二枚組で¥1,590と極めて安い。

walter-brahms.jpg

この全集は、大学生の頃、私がはじめてブラームスの交響曲を聴いたときに選んだもので、自分にとり特別の意味をもつ録音だ。
私が本格的にクラシック音楽を聴きだしたのは大学に入ってからなのだが、周囲には熱烈なフルトヴェングラー・ファンがおり、クラシック音楽の演奏とはフルトヴェングラーとトスカニーニの間で、主観でいくか客観でいくしかないのだなどと熱っぽく語っていた。
しかしそんな極端な言い方に反発した私は、当時戦後の三大指揮者の一人といわれ、フルトヴェングラーとトスカニーニの間の第三の人とされていたブルーノ・ワルターを切り口にしてクラシック音楽を聴き始めたのだった。
ブルーノ・ワルターには、一曲に大体三種類の演奏があり、戦前、戦中のヨーロッパで活躍していた時期から渡米直後のSP盤への初期録音(オーケストラはウィーン・フィルが中心)、長時間盤を替えずに聴くことができるLP盤が開発されてからの戦後の録音(オーケストラはNYフィルが中心)、ステレオ録音技術が開発されてからの録音(オーケストラは当時引退していたブルーノ・ワルター用に特別編成されたコロンビア交響楽団)と、明確に区分され、それぞれ演奏スタイルも若干異なる。極めて単純化していえば、戦前の典雅、戦後の雄渾、晩年の枯淡ということになるだろうか。私は、せっかくブルーノ・ワルターを聴くのならなるべく順番にと思い、モノラル録音のレコードから集め出したので、NYフィルとの演奏が最初のブラームスとなったのだった(それに、モノラル録音のレコードの方が安かった)。
しかしそうしてブルーノ・ワルターの演奏を聴いているうちに、しだいにレパートリーの似かよったクレンペラーの演奏が気になりだし、最後はクレンペラー一辺倒になってしまった。したがって、ブルーノ・ワルターの録音のなかでも、晩年のステレオ録音はほとんど聴いていない。
ちなみに、ブルーノ・ワルターとクレンペラーのレパートリーが近いというのは、この二人の演奏ではフルトヴェングラーとトスカニーニにはないモーツァルトとマーラーの音楽が大きな柱の一つになっているという事実がある(モーツァルトはさておき、ともにユダヤ人であるブルーノ・ワルターとクレンペラーはマーラーの直弟子にあたり、マーラーを熱心に取りあげていた)。二人の演奏は、情緒的なブルーノ・ワルターとつねに冷静で緻密なクレンペラーで一見極端に異なっているようでありながら、音の出し方に意外と似たところがあるのではないかと私は考えている。つまり二人とも、固まりとなってぶつかってくるような音は出さす、その出す音色はきれいに磨き抜かれている(クレンペラーの演奏の場合、それをしつこいと感じる人もいる)。そういう点では二人とも極めて職人的な演奏家なのだが、そうでなくては、モーツァルトをきちんと聴かせることはできないだろう。

ただ今から考えると不思議なことに、ブルーノ・ワルターと私との縁は大学に入ってからはじまったものではなく高校時代に遡る。
雪深い田舎の町(年末に特急が脱線した町の近く)で高校時代を過ごした私は、クラシック音楽のLPレコードを三種類しか持っていなかったのだが、その一つがブルーノ・ワルターが指揮するマーラーの交響曲『大地の歌』(ステレオ盤)だった。私が高校二年の時にヴィスコンティの映画『ヴェニスに死す』が公開され、そのなかで、名前すら知らない作曲家マーラーの交響曲が使われ重要な役割を果たしているというので、なけなしの小遣いをはたいてマーラーのレコードを購入することにしたのだった。ところで、ヴィスコンティが『ヴェニスに死す』で使っているのは、実はマーラーの第五交響曲と第三交響曲なのだが、田舎のレコード店には五番も三番もなく(だいいち、当時はマーラーを録音する指揮者自体極めて少なかった。五番にはブルーノ・ワルターのモノラル録音もあるが、三番を録音していたのはおそらくバーンスタインぐらい)、レコード店のおやじさんと相談して、代わりに『大地の歌』を購入したのだった。
しかしこの『大地の歌』はいっぺんで気に入ってしまった。それからは、自分で『大地の歌』に使われている原詩(漢詩)を調べたり、そうとう入れ込んで毎日のように『大地の歌』を聴いていたのだが(今から考えると極めて異常<笑>)、そのころなにを考えながら『大地の歌』を聴いていたか、少しも思い出せない。それと、高校生時代は、この曲を演奏していたブルーノ・ワルターには特別の思い入れはなかった(演奏評ということで当時の私が規準にしていたのがオペラについての本で、オペラの正式録音がないブルーノ・ワルターは、この本には登場しなかった)。
そんなことがあり、大学生になって本格的にクラシックを聴こうということになっても、フルトヴェングラーにもトスカニーニにも、ベームにもカラヤンにも惹かれなかったのかもしれない(この四人のなかで『大地の歌』を録音しているのは晩年のカラヤンのみ)。それと当時の私は、グラモフォン・レーベルの録音(フルトヴェングラー、カラヤン、ベーム)というのはいかにも「本格派」「正統派」という感じで、それだけで好きではなかった(笑)。
ちなみに、私が高校時代にもっていたLPレコードは『大地の歌』の他、フルトヴェングラーのベートーヴェン第九とカラヤンのヴェルディ『オテロ』。まあ極めて異様な取り合わせだが、考えてみると、どの曲も歌が入っている。第九や『オテロ』はさることながら、『大地の歌』も、その一部は今でもそらで歌える。
さあ今日は、ブルーノ・ワルターのブラームスをじっくり聴くことにしよう。

NB:先日ふと気づいたのだが、ブルーノ・ワルターの「ワルター」というのは彼の名字(名前)ではない。ブルーノ・ワルターにはシュレシンガーという姓があるのだが、演奏者としてはあえてそれをはずし、二重の洗礼名だけを名乗っている。ジャン・ジャックとかアン・マーグレットとかいう感じだ。したがって、彼の名前を書くときに、通常行われているようにワルターと略すのはよくないのではないかと思えてきた。この記事でもあえてしつこくブルーノ・ワルターと連呼する次第。
参考「ブルーノ・ワルター」(Wikipedia)
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テーマ:クラシック音楽 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2006/01/08(日) 11:56:25|
  2. クラシック音楽
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コメント

大地の歌&フルトヴェングラー

大地の歌の一部、おぼえてらっしゃるんですねー。
マーラーの曲では、大地の歌もいいけれど
「巨人」も出だし部分が好きだったりします。
あと。晩年のフルトヴェングラーは、
手がずっとプルプルと震えているので、
いつ指揮棒を振り出したのか、判断するのが大変で…
なんていう笑い話を、コンサートマスターを勤めた先生(バイオリン)から
聞いたことがあります(笑)v-22
  1. 2006/01/10(火) 22:20:23 |
  2. URL |
  3. ミミ #JalddpaA
  4. [ 編集]

「生は暗く、死もまた暗し!」

ませた高校生だった私は、『大地の歌』の「生は暗く、死もまた暗し」という歌詞にいっぺんでほれこんでしまったのですね。でも、この歌詞、当時はどんな思いで聴いていたのかなあと思います(笑)。
フルトヴェングラーは、同じ時期に『第九』で洗礼を受けているわけなんですが、なぜか、彼からはあまり強いインパクトを受けませんでした。
私の推奨の『第九』は、やはりクレンペラーの『第九』です。マーラーのあと、シェーンベルクやストラヴィンスキーなどの様々な新音楽を生み出した時代の『第九』はこれしかないという気がします。クレンペラーで『第九』聴くと、全体の構造や流れもさることながら、曲を構成する一つ一つの音がその音でしかありえないという感じで鋭く突き刺さってくるのですね。
それはストラヴィンスキーの音楽のようであると同時にバッハの音楽のようでもあるという、いわば時代や様式を超越した絶対音楽として演奏されているといってもいいと思いますが、その時、ベートーヴェンの音楽は、その巨大さをあますところなく示すのですね。
  1. 2006/01/15(日) 10:17:18 |
  2. URL |
  3. lunatique #tmBa20pk
  4. [ 編集]

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