le monde lunatique

白銀色の月光を浴びて、狂ってしまったのは世界?それとも私?

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神風連に連なる東文彦の家系

今、三島由紀夫研究のなかで東文彦が重要視されているのは、下に書いたペンネームの由来にくわえて、母方の祖父・石光真清(マキヨ、明治元年ー昭和十七年)を通じて、「神風連」に連なる人物だからだ。
三島が『豊穣の海』四部作のなかで、明治九年熊本に起こった士族の反乱・神風連の乱を大きく取りあげているのは周知の事実だが、同時期に起こった同じようなさまざまな動きのなかで、三島がなぜ神風連に着目したかは必ずしも明らかになっていない。
ところが、石光真清は熊本城下に生まれ、幼くして神風連の乱を目撃し、その手記のなかに神風連についてもくわしく記している(その手記は、現在、中公文庫『城下の人 石光真清の手記一』として刊行されている)。
三島は、東文彦、石光真清という流れのなかで神風連の乱に興味をもったという蓋然性も高く、それが東文彦の家系の研究と結びついているのだ。

   *    *    *

「神風連の領袖、加屋霽堅(はるかた)に初めて会い、熊本城の由来を聞いた私は、ざんぎり頭の洋学生の兄真澄や従兄弟たちに、手柄顔でその話をしたのに母までが苦笑し、兄たちは私の稚児髷、帯刀の姿をひやかして、声を立てて笑った。姉の真佐子だけが洋学生たちを睨み据えて私をかばってくれた。
 父は、この有様を黙って眺めていたが、
「お前たちは、神風連、神風連と、あの方々を、天下の大勢に暗い頑迷な人のように言うが、それは大変な誤りだ」
と、おだやかながらも、きつい眼付きで、ひとわたり皆を見まわして言った。
「あの方たちは、御一新前は熊本藩の中枢にあって、藩政に大きな功労のあった方々だ。学識もあり、勤皇の志も厚い。ところが御一新後の世の動きは、目まぐるしく総てが欧米化して、日本古来の美点が崩れて行くので、これでは国家の前途が危いと心配し、明治五年、太田黒伴緒雄氏、加屋霽堅氏等をはじめ国学の林桜園先生の感化を受けて百七十余名の方々が会合して今後の方針を協議された。この会合で日本古来の伝統は必ず護る。外国に対しては強く正しく国の体面を保つことを申し合わせた。この人々を進歩派の人たちが神風連と呼ぶようになったもので、その後、いろいろと保守の策を試みたが、時代の風潮を阻むことは出来なかった。(後略)」
 父はこう説明して皆の顔を見渡した。
「洋学をやるお前たちとは学問の種類も違っているし、時代に対する見透しも違うが、日本の伝統を守りながら漸新しようとする神風連の熱意と、洋学の知識を取り入れて早く日本を世界の列強の中に安泰に置こうと心掛けるお前たちと、国を思う心には少しも変りがない。(中略)いいかな。今後はあの方々を軽蔑するようなことは慎しみなさい。」
 兄や従兄弟は神妙な顔でお辞儀をした。父の話には、いつも厳しい説得力があった。」(『石光真清の手記』より)


【参考】
石光真清ホームページ
神風連の乱のページ(熊本城公式サイト内)

【追記】
三島は、昭和41年8月に、『豊穣の海』~『奔馬』取材のために熊本を訪れているが、この時に訪ねた人物は荒木精之(三島の書簡によれば、荒木には学習院時代からの師・清水文雄の紹介で会っている)で、石光真清関係の人物とは会っていないようだ。その点から推測すると、この取材の時点では、仮に事前に石光真清の手記を読んでいたとしても、石光真清~東文彦というつながりに三島は気づいていなかったということも充分考えられる。
したがって、その後何らかの経緯で、三島は、神風連~石光真清~東文彦というつながりを知り、あらためて、東との浅からぬ縁に気づかされたとする方が、小説的過ぎるかもしれないがおもしろい。
自決する直前、三島が『東文彦作品集』刊行に奔走したという事実も、『奔馬』を書いてから神風連と東の関係に気づいたとした方が、自然に解釈できるような気もする。(3月11日)
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テーマ:本の紹介 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2006/03/06(月) 13:48:03|
  2. 文学(人と作品)
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  4. | コメント:1
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  1. 2006/11/13(月) 21:46:45 |
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